識別力が否定された事例NO29

「AIアナウンサー」の文字を標準文字で表して成り、第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、電子計算機用プログラムの提供。」を指定役務とする本件商標の識別力が否定された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10115号 審決取消請求事件)。「AIアナウンサー」との文字は、AI(人工知能)を用いてニュース原稿の読み上げを行うシステム(プログラム)の設計や提供、保守に係る役務、すなわち役務の質を指すとして、識別力が否定されました。

(要旨)NHKは、平成30年3月、ロボット実況の技術をベースに開発した、人間のアナウンサーに近い音声でニュース原稿を読み上げる新サービスを開始することを発表した。同サービスを紹介するネットニュースでは、「NHKに“AIアナウンサー”が登場 『ヨミ子さん』がニュースを読みます」、「AIアナウンサーが発展して速報に対応できるようになると、NHKスタッフの働き方改革の一環にも繋がる」などと紹介された。(甲9~11)これらの事実によれば、本件査定日当時、①ニュース原稿等を人間のアナウンサ-に代わって読み上げることのできるプログラムが複数開発され、実際のニュース番組等で使用されていたこと、②これらのプログラムは、これまで人間のアナウンサーによって行われていたアナウンスをAIが代わりに行うことから「AIアナウンサー」と称されたことが認められる。そうすると、本件査定日当時、本件商標である「AIアナウンサー」が、無効対象指定役務である電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、電子計算機用プログラムの提供に係る業務に使用された場合、取引者、需要者は、AI(人工知能)を用いてニュース原稿の読み上げを行うシステム(プログラム)の設計や提供、保守に係る役務、すなわち役務の質を指すものと認識したと認めることができる。
加えて、本件商標は、「AIアナウンサー」の文字を標準文字で表してなり、格別の識別力を付加する要素はないから、役務の質を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に当たる。したがって、本件商標は、本件査定日において、無効対象指定役務につき、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、また「AIアナウンサー」業務とは関連しない役務については、役務の質についての誤認を生じさせるおそれがあると認められるため、法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。
これに対し、原告は、本件査定日当時、「AIアナウンサー」の語は比喩的・多義的で、現実世界のアナウンサーを擬人化した存在(前記1(1)~(3)の「ナナコ」、「荒木ゆい」、「ヨミ子さん」)を指すものとしても用いられており、役務(プログラム)の内容を記述する語として一義的ではなかったから、本件商標は役務の質を表示するものではないと主張する。しかしながら、「AIアナウンサー」の語が原告の主張するような意味で用いられていたとしても、上記1で認定したとおり、本件査定日当時、既にAIを用いてニュース原稿の読み上げを行うシステムが開発・実用化され、「AIアナウンサー」という名称で報道されていたことに加え、「AI」(人工知能)が電子計算機用プログラム(コンピュータプログラム)の一種であることも知られていたことからすれば、本件商標が無効対象指定役務に使用された場合に、その役務の内容を認識できないほど、比喩的・多義的であったとは認められない

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