遠隔シャンパン
標準文字「遠隔シャンパン」(ゲストが実際に店舗に来店しなくても、シャンパン等をプレゼントとして贈る行為)の商標拒絶審決に対する審決取消請求事件をご紹介します。「シャンパン」はご存じの通り、発泡性ぶどう酒として著名であり、この文字を商標に含めたため、公序良俗違反(商標法4条1項7号)として拒絶判決が出されました(令和6年(行ケ)第10030号)。極めて著名な商標を含めた商標登録出願は、悪気が無いとしても公序良俗違反(商標法4条1項7号)として拒絶されますのでご注意ください。
(判決要旨)
「シャンパン」の表示及び表示が示す発泡性ぶどう酒については、世界的に高い名声、信用、評判が形成され、フランス及び同国民の文化的所産というべきものとなっており、我が国においても、本願商標の指定商品の取引者、需要者のみならず、一般国民の間に広く知られ、多大な顧客吸引力が備わっている。本件商標は、「遠隔シャンパン」の文字を標準文字で表してなるところ、「遠隔シャンパン」の語は、広く一般的に認識されているとは認めるに足りず、「遠くへだたっていること」等を意味する「遠隔」と「シャンパン」を組み合わせた造語であると認識される。 そして、前記のとおり「シャンパン」の語が有する著名性と多大な顧客吸引力を考慮すると、本件商標からは、「エンカクシャンパン」の称呼とともに、「シャンパン」の称呼及び、前記のとおり著名で多大な顧客吸引力を有する「シャンパン」の観念が生ずると認められる。著名な「シャンパン」の表示が備えた多大な顧客吸引力へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせることを許容する結果となるおそれがあるのであって、国を挙げて「シャンパン」の表示の保護に努めているフランス国民の感情を害し、我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであるから、国際信義に反するものといわざるを得ない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項7号に該当する。