意匠文献と特許文献の組合せ
進歩性を否定するとき、引例同士の技術分野、課題、作用機能が共通であることが求められます。今回は、意匠文献と特許文献とを組み合わせることが争点の1つとなった事例を紹介します(令和6年(ワ)第1462号 実用新案権侵害差止等請求事件)。意匠公報には通常、課題が記載されていないことから、意匠文献と特許文献とを組み合わせて進歩性を否定する事は、ハードルが高いです。
(要旨)乙18文献には、発明の名称を「座面付きクッション」とする背もたれ部及び肘置き部を備えるクッションが、乙19及び乙20は、座面のない肘置き部を有する背もたれクッションが開示されているから、乙18ないし20には、上記イの相違点に係る構成が開示されている。乙18ないし20に開示されているのは、いずれも背もたれクッションであるから、乙11考案と技術分野において共通する。しかし、乙11考案は、意匠公報(乙11文献)に記載されているもので、乙11文献にその課題に関する記載はないから、乙11考案の課題と乙18ないし20に開示された背もたれクッションの課題が共通すると認めることはできない。また、乙11文献の【意匠の物品の説明】欄には、乙11考案の用途につき、「背もたれクッション」のほか「枕、オットマン、座布団として使用することもできる」と記載されているところ、仮に、乙11考案に上記相違点である肘掛け部の構成を付加すると、上記の「枕」や「座布団」の用途を実現することができなくなる上、背もたれ部と底面部という2つの構成のみから成るデザインであるという乙11考案の意匠としての美観が損なわれることになるから、乙11考案に乙18ないし20に開示された上記肘掛け部の構成を組み合わせることについては阻害要因がある。よって、乙11文献を主引例とし、乙18ないし20に開示された技術を組み合わせることを理由とする無効理由は認められない。

