免除ロイヤリティー法
知財譲渡対価計算方法の一つであるロイヤリティ免除法は、無形資産を自社保有することで免除されるロイヤリティ費用を基に、その無形資産の価値を評価する手法です。今回は、ロイヤリティ免除法で譲渡された特許群の中から職務発明として相当の対価が争われた事例を紹介します(令和7年(ワ)第70203号 職務発明対価相当請求事件)。職務発明の相当の対価を受ける権利について、販売製品に対する特許権の関与が必要になります。
(要旨)本件一括譲渡は、被告の完全親会社である村田製作所がグループ会社の保有する知的財産権を一元管理する目的でされたものであり、本件各特許権を含む合計●省略●の知的財産権を譲渡対象とし、譲渡対価は、第三者評価機関による免除ロイヤリティ法に基づく評価結果に基づき、43億1000万円と定められた。免除ロイヤリティ法は、インカム・アプローチの一つであり、知的財産権を保有することにより、仮に当該知的財産権を保有していない場合に第三者に支払う必要があるロイヤリティを支払わなくて済むという考え方を前提に、支払わなくて済むロイヤリティに基づいて知的財産権の価値を算出する評価方法である。イ 本件一括譲渡に係る価値評価において、被告が保有する特許権等についての第三者評価機関からの問合せに対する回答で、①実施されている特許権及び②特に重要と考える特許技術を列挙しているが、本件各特許権はいずれの回答でも挙げられなかった。ウ 被告又は村田製作所は、平成20年10月24日(本件各特許の最初の出願日)以降、本件各特許発明を実施しておらず、そのような予定もない。そこで検討するに、本件一括譲渡は、本件各特許権を含む合計●省略●の知的財産権を対象とするもので、その譲渡対価は免除ロイヤリティ法により評価されたものである(前記⑴ア)。そして、免除ロイヤリティ法は、知的財産権を保有していなければ支払う必要があるロイヤリティに基づくものであるから(同ア)、実際に実施される知的財産権を基礎とする評価方法といえるところ、本件各特許発明は、第三者評価機関からの問合せに対する回答に挙げられておらず(同イ)、また、実施されておらず、実施予定もない(同ウ)。そうすると、本件各特許権については、多数の知的財産権のうちの1つとして、その他の権利とともに厳密な検討を経ることなく譲渡の対象とされたものというべきであり、多数の知的財産権群を構成するものとして初めてその価値を把握され得るものであって、本件一括譲渡の譲渡対価の算定に対する特段の寄与を認めるには足りないというべきである。したがって、被告が本件各特許権の譲渡対価を得たと評価することはできない。

