職務発明

特許を受ける権利を有する発明者は、職務発明の場合、相当の利益を受けることができます(特許法第35条第4項)。今回は、職務発明に関する特許法35条の規定が、外国の特許を受ける権利に適当されるか否かが争われた事例を紹介します(令和7年(ネ)第10077号 職務発明対価請求控訴事件)。属地主義の原則から、日本特許法に規定される特許を受ける権利は、外国の特許を受ける権利に適用されないと判断されました。

(要旨)本件においては、控訴人が、本件訴訟の対象として、本件各発明につき我が国で特許を受ける権利を被控訴人に取得させたことによる相当の利益に加えて、外国の特許を受ける権利を被控訴人に取得させたことによる相当の利益を請求しているのかどうかが問題となるので、以下、この点について検討する。我が国の特許法が、外国の特許又は特許を受ける権利について直接規律するものではないことは明らかであり、特許法35条1項から3項までにいう「特許を受ける権利」が我が国の特許を受ける権利を指すものと解さざるを得ないことに照らすと、同条4項にいう「特許を受ける権利」についてのみ外国の特許を受ける権利が含まれると解することは、文理上困難であって、外国の特許を受ける権利を取得させたことによる相当の利益の請求について、同条4項及び7項の規定を直接適用することはできず、これらの規定が類推適用されるにとどまるものと解される(最高裁平成16年(受)第781号同18年10月17日第三小法廷判決・民集60巻8号2853頁参照)。
このように、我が国の特許を受ける権利を取得させたことによる相当の利益の請求と、外国の特許を受ける権利を取得させたことによる相当の利益の請求とは、法条の適用関係が異なるから、訴訟上、別個の請求を構成するものと解すべきである。このことは、実務上、職務発明の対価又は利益の請求訴訟事件において、「特許を受ける権利(外国の特許を受ける権利を含む。)」などとして、特許法35条及びその類推適用により対価又は利益の額が一体として算定されることがあるとしても左右されるものではない。これを本件についてみると、控訴人は、訴状中の請求の原因として、我が国の特許出願番号及び出願公開番号等により本件各発明を特定した上で、「原告は、被告に対し本件各発明に係る特許を受ける権利を譲渡したため、特許法35条4項により、被告より相当の金銭その他の経済上の利益…を受ける権利を有する。」と記載しており、特許を受ける権利に外国の特許を受ける権利が含まれていることを明記しておらず、特許法35条4項の類推適用を主張することも記載していない。加えて、控訴人は、原審の口頭弁論終結以降、当審においても、被控訴人から、外国の特許を受ける権利を取得させたことによる相当の利益の請求は本件訴訟の対象外であると主張され、その根拠とするところも具体的に示されていたのに、当審の弁論終結に至るまでの間に、訴えの追加等をしなかった。これらの事実関係によると、控訴人は、本件訴訟において、被控訴人に対し、特許法35条4項に基づき、本件各発明について我が国で特許を受ける権利を被控訴人に取得させたことによる相当の利益のうち、令和6年3月31日までに発生したものを請求していると解するのが相当である。

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