依拠性
著作権侵害が成立するには、単に作品が類似しているだけでは不十分で、被疑侵害作品が既存の著作物に依拠して作成されたことが必要です。今回は、依拠性が争点の一つとなった著作権侵害に関する事例を紹介します(令和8年(ネ)第10005号 損害賠償請求控訴事件)。依拠性が認められるには、著作物の表現的な本質的な特徴を直接感得できることが必要です。
(要旨)控訴人は、前記第2の3⑶のとおり、被控訴人著作物には控訴人著作物への高度の依拠性が存する旨を主張する。しかし、補正の上で引用した原判決第3の2のとおり、被控訴人著作物は、控訴人著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものとは認められないから、依拠性について検討するまでもなく、控訴人の主張には理由がないことに帰する。なお、念のため、控訴人が偶然では絶対に生じ得ない特異な合致が存在すると主張する点につき検討すると、「スマホ時代の女子高生が現像されたスナップ写真を物理的に損壊する(時代設定との矛盾)」との点につき、控訴人著作物では皺の沢山付いた写真を持っているのは、原判決別紙著作物対比表番号9・10の被控訴人の主張に対する反論欄にも記載のとおり、高齢の男性であり、スマホ時代の女子高生が現像されたスナップ写真を物理的に損壊するものではない(甲1の5)から、そもそも合致の事実自体が存しない。また、「登場人物の亡き妹の形見であるお守りを川に投げ込む」との点については、被控訴人著作物において描かれたお守りは、亡き妹の形見ではない(甲4の41)から、合致の事実自体が存しない。「弁当の卵焼きとタコさんウインナーの配置・角度が完全一致する」との点についても、既に述べたとおり、弁当の卵焼きやタコ型ウインナーの配置・角度は、控訴人著作物と被控訴人著作物とで完全に一致するものではない(甲1の8の7枚目、甲17の27)。この点については、原判決別紙著作物対比表番号99の被控訴人の主張に対する反論欄に「弁当の中身の内容が、ほぼ同じに描かれている」として、控訴人も完全に一致するものと主張していないことからも明らかなとおり、合致の事実自体が存しない。以上のとおり、被控訴人著作物には控訴人著作物への高度の依拠性が存するとする主張は前提を欠くものである。したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

